就職活動中、私には誇れるようなエピソードがありませんでした。
部活動でキャプテンを務めたわけでも、留学経験があるわけでもありません。どちらかといえば内向的で、授業が終わればすぐ帰宅し、ひとりで考えごとをして過ごす学生でした。
「自己PRに書けるようなことがない」
そう悩んでいたとき、ふと頭に浮かんだのは、他人には言えないような“くだらない妄想”ばかりでした。
- 宇宙人が人間の深層心理を覗いたら、どんな反応を示すのか?
- この世から野球という文化が消えたら、社会にどのような影響があるのか?
- もし全人類が同じ夢を見たら、翌日の世界は変わるのか?
就職活動でこんな話をしても、誰の共感も得られず、落とされるに違いない。そう思い込んでいたのです。
しかし、最近『クレヨンしんちゃん ユメミーワールド』という映画を観たことで、その考え方が少し変わりました。
ユメミーワールドがくれた「感受性の再発見」

(C)くれよんしんちゃん/テレビ朝日/https://www.tv-asahi.co.jp/shinchan
『ユメミーワールド』は、夢と現実の境界が曖昧になる不思議な物語です。
子ども向けアニメという印象に反して、家族への想い、孤独、不安、言えなかった本音など、人間の深層心理が丁寧に描かれており、大人の私に強く響きました。
観ているうちに、自然と涙があふれました。
「感情移入しすぎてしまう自分はおかしいのだろうか」と戸惑いながらも、「もしかすると、これが“感受性”というものなのかもしれない」と思いました。
感受性は、社会では評価されないと思い込んでいた

(C)pexels
就活中の私は、「感受性」という言葉を口にすることすらためらっていました。
企業が求めているのは「リーダーシップ」や「論理的思考力」。
「感動しやすい」「空想が好き」といった性質は、社会では評価されないと信じていたのです。
だからこそ、「協調性があります」「責任感があります」といった、ありきたりなフレーズで本来の自分を隠していました。
けれど、社会人として数年働くなかで、ふと気づいたのです。
「感受性がなければ、この仕事は続けられなかったかもしれない」と。
波瀾万丈な経歴を経て、今は工場で働きながら転職活動中
現在、私は派遣社員として地方の工場に勤務しながら、転職活動を続けています。
営業職には適応できず、転職を繰り返し、短期離職の経歴もあります。「自分は社会に適応できない人間なのでは」と思ったことも一度や二度ではありません。
転職活動は決して順調ではなく、書類を送っても返信が来ないことの方が多いのが現実です。
それでも、前に進むしかないと思っています。
そんな私にも、ひとつだけ胸を張れるものがあるとすれば、それは人の気持ちや空気の変化に気づく“感受性”です。
工場の現場でも、周囲の人が無理をしている様子や、職場の空気がいつもと違うことにいち早く気づき、さりげなくフォローをしてきました。
上司から「気が利く」と評価されたこともあります。そのたびに、「感受性は職場でも役に立つものなのかもしれない」と実感するようになりました。
「くだらない空想」が、私にくれた視点

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就活当時に繰り返していた空想。今になって思えば、それらは「他者の立場に立って考える訓練」だったのかもしれません。
たとえば、「全人類が同じ夢を見たら翌日はどうなるか?」という問い。
一見すると非現実的なテーマですが、それを通じて「人々の心理的な動き」や「社会の価値観の変化」を想像することができます。
商品企画、マーケティング、接客、教育など、人と関わるすべての仕事において、“言葉にならない感情”を先回りして捉える力は、確実に武器になります。
自己PRで「感受性」は語っていい

(C) pexels
就活当時の自分に、今ならはっきりと伝えられます。
「感受性は、就職活動で堂々と語っていい強みです」
ただし、「感受性が強い」と言うだけでは伝わりません。
以下のように、具体的な行動や思考に落とし込み、言語化することが大切です。
- 人の感情に気づき、行動に移せる力がある
- 他者に共感し、相手の立場に立って物事を考えられる
- 常識や前提を疑い、新しい問いを立てられる視点がある
- 気づかれにくい感情を“言語化”する感覚を持っている
おわりに:感受性を持つ就活生の方へ
感受性が強く、他の人が見逃すようなことに気づいてしまう——そんなあなたの力は、今後ますます必要とされるはずです。
たとえ今は「空想ばかり」「意味がない」と思っていることでも、それは「あなたにしか見えない世界」を映す力です。
『ユメミワールド』を観て、私はそのことを再確認しました。
感受性は、語っていい。むしろ、語るべきです。
おまけ:感受性を強みにした自己PR例(就活用)
私の強みは、感受性と空想力です。日常のささいな変化や映画などから感情を深く受け取り、そこから“人が気づいていない気持ち”を読み取ることができます。
学生時代は、教室内の雰囲気や友人の心の変化に気づき、自然とサポート役に回ることが多くありました。社会人となった現在も、相手の立場や気持ちを想像する力は、対人関係や問題解決の場面で役立っています。